鰐等大喜利
お題
お墓の隣のアパートをわざわざ探して住んでいるOL
窓を開けたまま着替える女がいると噂になっていたのはこの人かと目があってから思い出したのが大学卒業前の夏頃で、およそ半年間一緒にいた。

道端のふきを手折って傘にして似合うと聞き全ての犬を同じ名前で呼び大きなウミユリの化石を飾りいつか飼うペンギンの餌のための小さな冷蔵庫を置き玄関のマネキンは僕を驚かせるので布がかけられ、思いつきで買ったサンキャッチャーが窓辺で輝きクリスマスに2人で貼った雪の結晶の横の壁には僕が教えた折り紙の手裏剣が張り付いていて、切り揃えた髪の内側を青やら橙にしたかと思うと深夜にハサミでめちゃくちゃにしては泣き夜はもっと強く噛んでみてと言われ最後はぜんぜんダメと言いながら写真を撮って投稿して、黒のフリルの服の日も目のやり場に困る服の日もまるで良家のお嬢様(僕にはそう見えた)のような服の日もあった。心酔しているらしいイラストレーターのよくわからない個展に連れて行き目の前で先帰ってと言い放ち、本当に聞きたいことを少し聞いては言ってみただけとすぐ僕の答えを拒否し、どこかに連れて行ってとわめいた後にどこにも行きたくないと布団に潜り込み、あんなに喜んで持って帰ってきたオミナエシもシンクで萎びていってホームセンターのレジ横で歓声を上げていた食虫植物はどこに行ったかわからない。

君は幸せの形ををやってるのに幸せになれなくてなんでだろうって顔してたけど、やってみたがるどれもがドラマや映画や漫画や小説やインターネットから君が理解できる範囲で君が探して君が実行できる範囲で君が借りてきたどうしようもない表層で、全部偽物だった。風呂に入っていたら覗きに来て笑うのに一緒に入ろうとすると嫌がって、遊びの提案も誕生日プレゼントもありがとうがいつもより遅くて、お客さんはお客さんのままでいてほしいんだなってわかった。

でも僕はずっとテレビ見てるみたいで、一生懸命テレビやってる君が愛らしくて、言ったらいなくなるって知ってたけど愛してるって言っちゃって(本当は別にそこまで愛してなかった)いま部屋は空っぽで、多分また別のお墓が見える部屋(今度は事故物件かも)でまた大学生を待っているんだろう。今はまだ死ぬほど好きだけどたぶん、君を死ぬほど嫌いになる季節がそこまで来てる。
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4点 極道の娘
2点 38.8℃
2点 神谷テクニカ
2点 森森
2点 virus菌
2点 とも
2点 灰色こたつ
3点 夏のワルプルギス

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